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「特許やぶりの女王」を読んだ


以前から気になっていたのですが先日購入して読みました。

「このミステリーがすごい!」大賞ですが、著者が現役弁理士で主人公は弁護士とともに特許法律事務所を立ち上げた弁理士ということで、いわゆる人が死なないタイプのミステリーです。ただ、法律問題が関わってくるので人が死なないミステリーとして代表的ないわゆる「日常の謎」ジャンルともまた一味違うものになります。

主人公は元々パテントトロールとして多額の賠償金を巻き上げていたかなりダーティーなタイプの弁理士だったのですが、弁護士と共同で産業財産権を守るための特許法律事務所を立ち上げます。序盤に出てくる依頼者の相手方は警告書を送った次の日に自力救済のために乗り込んでくるかなりムチャクチャな展開ですが、それを違法スレスレな方法で切り抜ける様子が描かれます。

ストーリーのメインとなるのは独自のかなり高度なモーションキャプチャ技術について特許権侵害警告を受けたVTuberとその所属事務所です。主人公たちもVTuberにはあまり詳しくないのでそのあたりはわりと詳細に解説されています。厳密にはVTuberとはいえないのですが、有名な方が演じていてそれなりに手の内を明かしているわかりやすい例はチョコレートプラネットのお二人がモーションキャプチャと声優を演じている「ヘルピポ!」です。
関連リンク:【チョコレートプラネットがモーションキャプチャ初体験!】CGアニメ「ヘルピポ!」PV

「ヘルピポ!」以上に激しい動きやダンスを含む作中で出てくるような高度なモーションキャプチャ技術を使っているのはおそらく現実には所属事務所からかなり資金や技術を調達している場合が多いと思いますが、作中での依頼者であるVTuberの所属事務所ではなく、VTuber(の演者)自身が入手して持ち込んだものであり、それが本当に特許権を侵害しているのか、警告の目的は賠償金か差止めかそれ以外の何かなのか、といったところが重要になってきます。ミステリーなのであまり手の内は明かさずこの程度にしておきます。

「このミステリーがすごい!」への応募と投稿の段階ではかなり専門用語が多かったそうですが、書籍化にあたってかなりの部分がわかりやすい表現に置き換えられているとのことです。ちなみに作中で重要な特許用語は、特許権の「専用実施権」という、設定登録によって特許権の所有者すらその範囲で特許権を行使できなくなる権利です。おそらく詳しい知識がなくても楽しめますが、あったほうが楽しめます。

Posted in その他日記

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