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【クリスマス記念】劇場版仮面ライダーゼロワン REAL×TIME 感想


いきなり「儀式の間」での仮面ライダーゼロツーと仮面ライダーエデンの対決から始まりますが、主人公のゼロツーは負けてしまい、或人は無人の地下鉄、通路に倒れている人々、誰もいない東京駅前という不思議な世界に迷い込んでしまいます。制作側も想定していなかったと思いますが、あまり不自然な光景に見えなくなってしまったのがなんとも…。どうやらそこはデータの世界。そこで出会った朱音の「心」に触れたことが重要な意味を持つことになります。

再び現実世界に戻ってきた或人はエスと戦うことになるのですが、ここに作中で一回きりの仮面ライダーエデンの変身シーンがあるので見逃さないでください。エデンゼツメライズキーは、作中でまさに絶滅の危機にある「人間」そのものをモチーフとしたゼツメライズキー。グロテスクにも、見方によっては神秘的にも思える変身で、とにかく効果音がめちゃくちゃかっこいいです(語彙力が消滅する)。この変身シーンも重要な意味を持つことになります。

そして、「人間でもヒューマギアでもない」「死という概念が存在しない」エス、そして信者たちの正体は、AIナノマシンの集合体であるアバター。人間”一色理人”としての生命を捨てて生まれ変わった”人類を超越した悪魔”エスと、安全な場所から自在にアバターを遠隔操作しているベルをはじめとした信者たちが世界滅亡に向けてテロを引き起こしたのでした。また、世界各地で一般市民をターゲットとした毒ガスと思われるものも、実際はナノマシンであったことが明かされます。

“仮面ライダーアバドン”たちが変身に用いるプログライズキーは”クラウディングホッパー”、すなわち”イナゴ”。そして”アバドン”の意味は「蝗害(バッタやイナゴの大群による害)を率いる堕天使」。現実世界ではインターネット上で、炎上を煽ったりそれに便乗して誹謗中傷したりする烏合の衆を蝗害になぞらえ、俗に「ネットイナゴ」と呼ぶことがあります。安全圏からアバターを動かし、世界を壊滅させるテロを引き起こしたアバドンたちはまさに「ネットイナゴ」と呼ぶにふさわしい存在です。アバターは本人に似ているものもいれば、本人の理想の姿になっているものもいて…これ以上いけない。作中では本体のコンプレックスを反映したアバターがクローズアップされていましたが、それこそ本体とは性別が逆のアバターとかもいそうですね。命懸けで戦うライダーたちと、安全圏からアバターを操作するだけのアバドンたちの対比もうまくできた設定だと思います。

野立常務を尋問し、改造されたザイアスペックでアバターを操作していることが暴かれますが、ここでボディチェックと称して野立常務からアキラ100%さんへと変わってしまう瞬間、そして児嶋さん演じる副社長とのやりとりは見ものです。ここのドタバタは賛否両論ありましたが、シリアスなこの作品の一種の清涼剤であり、しかもただのギャグパートではなく野立常務からエスと信者たちの属する破滅願望のある者が集まる闇サイトである”シンクネット”の実態が暴かれ、副社長と専務の或人に対する信頼が伝わる重要なシーンだと思います。ここでの副社長のセリフが、謹慎中の相方に対するものに聞こえたとの声も…?

ここで明らかになる、矢部太郎さん演じる謎の男の正体は、プロレスラーの後藤洋央紀さんが演じるアバター・ブガの本体。力強いアバターが、矢部太郎さんには失礼かもしれませんがおそらくキャスティングの理由である、ひ弱な本体の願望を反映したものという描写です。後藤洋央紀さんの公式グッズである「GTW」Tシャツを着て、ザイアスペックのようなものをつけてトイレでパソコンを操作しているあの画像には伏線がぎっしり詰まっていたのです。「相方がやらかした芸人同士」などという声もありましたが、これでもし常務の役が元キンコメの今野さんとかだったら…シリアスになりすぎて笑えないのでアキラ100%さんで良かったと思います。ちなみに、トイレで不審な行為をするのを副社長が咎めるような描写は…特にありません。

一方、エスを追って辿り着いた廃教会で世界を滅亡させるヘルプログライズキーをエスから奪い、ヘルライジングホッパーへと変身する或人。このシーン、あまりにも痛々しくて子供にとっては怖いかもしれません。しかし、それを仮面ライダーゼロツーが身を挺して止めました。その正体は…イズ。

データの世界で朱音の「心」に触れた或人は、エスの「心」に語りかけます。医療用AIナノマシンの被験者で、婚約者でもあった朱音をデイブレイクの60分で失った過去を持ち、朱音の脳をシンクネットのメインサーバーでデータ化していることが明らかになりました。朱音を死なせたことに責任を感じていますが、きっとそれは12年前ではなくて8年前です…そう、メタ的には8年前は教師と生徒かつサイコキラーと被害者だったのに、婚約者というのは演者同士の年齢差がありすぎる気もしますが、22歳の俳優に自称24歳の45歳を演じさせるような作品なので、そこにつっこむのは無粋かもしれません。DVDが出たらよく見たらどこかのシーンにあるであろう作中での年齢設定を確認したいところです。

エスの目的は、アークを生み出す原因となった悪意のある人間を排除し、心優しい人間だけをひとりぼっちの朱音のいる世界に送り込んで「楽園」を創造することでした。つまり、「選ばれた人間」とは信者たちではなく、毒ガスかと思われたナノマシンによってデータ化された人間たちのほうでした。おそらくこの逆転に驚かされ、手段は間違っていても目的を否定できるだろうかと思った方は多いと思います。愛する人のためなら世界を壊せるという、ちょっと古めのベタな展開ですが、特に大人でわざわざ映画館に足を運んで仮面ライダーを観る人はそういうのが好きだと思います。「憎むべきアークの力をあえて利用して目的を果たそうとする」、そして「悪意のある人間を排除してアークの生まれない楽園を創造しようとする」、エスも間違いなく仮面ライダーらしい仮面ライダーだったのです。

しかし、エスの真の目的に気づいたアバドンたちがエスを襲撃しに現れ、主人公をはじめとしたライダーたちはエスをシンクネットサーバーへと逃すために動きます。ベルは自ら仮面ライダールシファーに変身。楽園を追放された堕天使という時点で弱そう…などと言ってはいけないかもしれませんが、最後の最後、本当に倒されるべき敵は、悪意を持った信者たちのアバターでした。ここでの見どころはなんといっても或人とイズの同時変身、そして時を同じくしてシンクネットサーバー付近に集結したアバドンたちを倒すための諌・唯阿・垓・滅・迅の同時変身です。本編では戦闘要員ではなかったイズの変身、そして敵対するもの同士だった5人のライダーの変身。ここで滅が世界や人類を肯定するような発言をするのもなんとも言えない感慨深さがあります。

5人のライダーたちに守られながら辿り着いたシンクネットサーバーを停止し、朱音がたった一人で待っているデータの世界へ行くために消滅したエス。そこは紛れもなく、2人だけのための楽園でした。そしてここで気づく、最終話でアズがイズに似た姿からベールとドレス姿に変身した理由…なんという悪趣味…。

仮面ライダーたちもそれぞれアバドンたちとルシファーを殲滅し、60分の世界を賭けた戦いは終息。その後の展開として、ナノマシンでデータ化されようとしていた人々が後遺症もなく回復し、野立常務やシンクネット幹部の逮捕が報道されます。ただ煽動されてアバターを安全圏から操作しているだけだった「ネットイナゴ」たちが結果的に制裁されるという展開はスカッとします。そして、登場人物たちもいつも通りの日常へと戻っていきます。

ちょっとだけ「世界一のナンバー2」である副社長がゼロツーに変身するのも期待していたけれど、やはりイズが姿形は同じでも元のイズとは異なる形で「心」を得た展開がよかったのと、副社長が変身しないことすらネタバレになりそうで迂闊に言及できないのが怖いところです。色々仄めかされながらも何も明かされなかった飛電家について、なぜ先代の是之助社長が後継者として或人を指名したのか、或人が生まれてすぐに亡くなった両親のこと、先代社長と副社長やZAIAの関わりのことがいつか語られる日は来るのでしょうか。実は是之助社長と其雄には血縁関係はなく、其雄は娘婿で、娘=或人の母親をモデルにしたヒューマギアがイズなのでは?とか色々憶測していましたがわからないままでした。それだと或人とイズの関係がなかなかややこしいことになりそうですが…。

「エスもデイブレイクの被害者だった」ということから、やはりアークに人間の悪意をラーニングさせた垓の責任を追及したい人が多いようですが、なんというか彼のやったことは俗に「死の商人」と言われるようなわざと戦いを引き起こして利益を生み出そうとしたことであって、ラーニングの結果アークがどのように変容するかも想像がつくことではなく、それを罰することが現実的に可能かどうかを考えると割と難しい気がします。元々、キャラクターの方向性が明確に決まっていなかったらしく、垓が全ての元凶のように扱われていることも、テレビ本編の中だるみも何もかも、メタ的に言えば桜木那智さんの俳優としての才能が溢れていたことが悪いですね。

別の作品を引き合いに出すのはあまり良いことではないのと、双方のネタバレになってしまうのが悩ましいところですが。私としては「自らの生命を捨ててデータ化し、0と1の間の世界で愛する者と共に永遠に生きるために世界を巻き込む」エスの目的、そして人間と悪意との関係は【週刊少年ジャンプで連載されていた魔人探偵脳噛ネウロの電人HAL編、悪意との関係はシックス編(←反転してください)】を思い出しました。そしてテレビ本編と同じく、強すぎる敵に対して力ではなく心の強さで目的を諦めさせるという点についても、【週刊少年ジャンプで連載されていたシャーマンキングの完全版の結末(←反転してください)】を思い出しました。よく観ると仮面ライダーエデン、映画版の敵という扱いなのに、戦いでは一度たりとも負けることなく、或人の説得で自ら消滅する道を選んだだけですからね。とんでもない強敵です。でも、エスが本当に一色理人と同一の存在なのか?本編で垓が言及していた「ヒューマギアには感情を制御する理性が存在しない」、【週刊少年ジャンプで連載されていた魔人探偵脳噛ネウロの電人HAL編(←反転してください)】での「人間の脳をコピーした人工知能には良心が存在しない」というようなセリフからすると、なんだかそこから疑いたくなってしまう気がします。

シナリオライターの高橋悠也さんによると、ある意味現代の作品らしさがありますが、登場人物の言動の善悪などについて明確な答えは出さず「観る人によって解釈してもらいたい」とのことです。この映画だと、私たち一人一人がちょっと破滅願望や悪意を煽られるだけで仮面ライダーアバドンになりうる、無差別に人を攻撃してしまいうる存在であると感じました。一部で「社会派」などという評価をされているのはそういう理由だと思います。ゼロワン全体を通じて「倒すべき敵」というものの実体はなく、すべての人間、そして作中ではすべてのヒューマギアの心に宿る「悪意」という概念そのものが敵であり、「悪意」は概念だから完全に倒すことはできず乗り越えるしかない、というのがテーマになっているのだと思いました。

いい感じに締めたつもりでしたが最後に追記。主要キャストによるクリスマス座談会の動画のプレゼント企画で、野立常務(アキラ100%さん)のパンツ(語弊)が当たるらしいので応募しました。需要が謎すぎるグッズですがゼロワンをここまで見てきたならぜひ手に入れたいものです。運には自信があるので当たりますように。


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