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ドラマとシナリオブックの感想 #おカネの切れ目が恋のはじまり


ドラマの感想

シナリオブックからすると、3話までは本来の4話以降の伏線とされていた一部のシーンが抜けているところもありますが、ほぼ予定通りの筋書きで放送されたようです。また、4話もストーリーの大筋の変更はありません。ドラマは放送順通りに撮影するわけではないので、抜けているシーンは元々撮影されていなかった可能性もあります。

第1話「私たちは日々、お金に振り回されている」

私の奨学金の残債は北村匠海さん演じる板垣より多いです。悲しい。
作中では「清貧」「世捨て人」などとされていますが、松岡茉優さん演じる玲子のライフスタイルは完全にミニマリストですよね。作中で随所随所に出てくる「方丈記」も、諸行無常をベースにしたある種のミニマリスト文学のようなところがあります。そして、今は別居している父が逮捕されたような過去?が断片的に描かれます。私はこの時点では以前見た世界仰天ニュースの影響か、父が横領してよその女に貢いでいたとかそんなんを予想していましたが、実際は…(4話の感想で書きます)。
ひょんなことから勤務先の社長の息子で、三浦春馬さん演じる慶太が玲子の実家で経営する民宿に間借りすることになり、しかも慶太は玲子がずっと欲しかったモノを雑に買っていった張本人、というラブコメとしてはなかなかベタな展開です。それにしても慶太のキャラは下手に演じたらただのウザい奴です。三浦春馬さんだからこそ、ウザいけど愛されるキャラが確立しているように思います。
販促品の転売、新幹線の経費を懐に入れて夜行バスを使うという些細ながら本人への負担が大きい着服、清貧を称しながらも初恋の人で、三浦翔平さん演じる早乙女への出費は惜しみない、といった様々な「ほころび」が見つかり、婚姻そのものをテーマとして大ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」とは別の方向性で”社会派ラブコメディ”として楽しめる予感がしました。

第2話「その恋、投資する価値アリですか?」

前回に引き続き声優の梶裕貴さんがゲスト出演し、実写版エレンvsアニメ版エレンなどと言われていました。
「消費、浪費、投資」というのは有名ではありますが、このドラマで見てから強く意識するようになりました。
星蘭ひとみさん演じるまりあに玲子が言っていた「コンコルド効果」「埋没費用効果」、「サンクコストバイアス」とも言われる、今までの投資が無になることを恐れて引くに引けなくなることを表す用語。今回も勉強になります。そして最後の不穏な描写。

第3話 「恋の終わり。そして、はじまり」

慶太の「妹」、八木優希さん演じるひかりが本格的に登場。しかし、どうやらアンジャッシュのコントのような勘違いが起こっていたようです。
そして、早乙女が妻子の存在を隠して有名になっていたということから作中で炎上騒ぎに。ドラマ内では断片的にしか描かれていませんが、プロテニス選手を引退してお金の勉強を始め、お金の専門家として有名になり始めた頃に結婚したがそれを幼馴染の玲子にすら隠していたとのこと。そして、失恋した玲子のそばにいた慶太との恋が始まる予感…。
キャストやスタッフの方の負担を考えると、とれ高のある3話までで、物語としては未完ですが恋の予感のまま終わらせるという選択肢もあったと思います。

ドラマの撮影期間に主要な俳優が急逝し、それまでに撮影できていたシーンを活用して台本を練り直し放送したドラマというと、2018年の「バイプレイヤーズ2」が思い出されます。最終回は、急逝した大杉漣さんの存在を随所に感じさせる演出が際立っていました。しかし、「バイプレイヤーズ2」は、大杉漣さんをはじめとする名脇役俳優たちが本人役を演じるという、かなり特殊なドラマなので虚実入り混じったような演出ができましたが、同じようなことはできないのではないかと思っていました。

第4話 「過去への旅」

「4話の途中まで撮影済み」と当初は報道されていましたが、どうやらほとんど4話のとれ高はなく、ほとんどのシーンが訃報の後に撮影されたものだと思うと心が苦しくなります。
慶太について「6時過ぎくらいに朝早く家を出ていった」「無断欠勤」など穏やかでない言葉が飛び交いつつ、経理部の面々が「いつもサボってるけどいないと寂しい」と…もうこのあたりで悲しみをこらえながら演じているのではないかと…つらいですね…。
そして玲子宛ての心当たりのない現金書留を見つけたことから、玲子の過去に関わる重要人物である父のもとに、ひょんなことから板垣も同行して行くことになります。本来なら慶太が後押ししてくれていたんだろうな…とか…。
過去の予想、「横領」だけは合っていたんですが、父は玲子に好きなことをさせるためのお金を横領によって捻出していたという、重い過去を玲子に背負わせてしまったことが明らかになりました。何もかも手放しても、父に買ってもらったおもちゃだけは大切に繕って、そのおもちゃメーカーに就職した…なんて思いが強いんだ…。
そして、鎌倉の玲子の家に慶太の両親、つまり社長と創業者の娘の夫妻が現れます。ここでの草刈正雄さん演じる社長のセリフも、まるで三浦春馬さん本人のことを言っているように思えると話題になりました。

そして玲子が慶太の手作りの豆皿を部屋で見つけ、慶太の不在を悲しみ縁側でうたた寝する中、方丈記の現代語訳の朗読「静かな夜は月を見る。猿の声を聞いて涙をこぼす」が入ります。本来は「もし、夜しづかなれば、窓の月に故人をしのび、猿の声に袖をうるほす」という一節で、あまりにも直球すぎることからここだけ現代語訳になったようです。
次の朝、慶太が帰ってきたことを暗に示すような描写で終わりました。

4話については、ほとんど三浦春馬さんの新規の登場シーンはなく、訃報より後に、キャストもスタッフもつらい状況の中撮影されたものと思います。「突然早朝に家を出て会社にも来なくなった」という慶太のキャラならギリギリ不自然ではないけどやはり視聴者からすると不自然な状況でストーリーが進んで行きます。それぞれの出演者が慶太に対する思いを語るシーンはまるで三浦春馬さん本人を思っているようでした。前述のバイプレイヤーズ2と違って完全なフィクションなので不可能だと思っていましたが、「あえて不在を強調して慶太の存在感を強く印象付ける」という、奇跡の最終回になりました。

今まで、「14才の母」での主人公の恋人で子供の父親にあたる男子中学生役、「大切なことはすべて君が教えてくれた」での婚約中でありながら生徒と関係を持つ教師役など、何か影のある役柄の多かった三浦春馬さんにとって、本当ならこの「おカネの切れ目が恋のはじまり」での軽率極まりない(今までの影のある役も軽率といえば軽率ですが)ポジティブなドラ息子役は、何事もなければ新境地として人気を集め、これからの俳優としての活動にもいい意味で大きく影響していたと思います。本当に、続きが見られないのが残念です。

(次のページはシナリオブックの結末までのネタバレを含みます。)

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