昨日の投稿では、第三者による独占を防ぐために「ゆるキャラ」を商標登録したみうらじゅん氏の話題を取り上げましたが、本日はそれとは一転、流行語などの商標登録を出願することで利益を得ようとする商標ゴロの実態を取り上げます。
実は、以前の投稿でもこの話題を取り上げたことがありましたが、改めて商標ゴロのほうに着目したいと思います。特にインターネット上ではちょっとした有名人なので、今更取り上げなくてもご存知の方は多いかもしれません。
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商標ゴロ U氏・関連会社 B社
・流行語などを次々に商標出願し、その割合はU氏個人およびU氏の関連会社で年の日本全国の商標出願の約1割を占める
・しかし、ほとんど手数料を支払わず撤回されている。
・「先に商標登録して権利を得ることで利益に繋げることが目的」と公言している
・流行語などを商標出願し、「商標出願を無視して使用すれば損害賠償請求の対象になる」と発言
・例として、数年前に流行した「PPAP」を商標出願し、エイベックスに警告書を送付したと発言(のちにU氏の出願は却下、エイベックスによる商標登録が受理される)
・テレビ局のインタビューに対し「取材料もらえる?」と発言
・隣の市にU氏およびB社の活動拠点があってなんか怖い(個人の感想)
特許庁もこの手口に困惑しているようですが、制度上は出願そのものをやめさせることが困難であるため、次のような文書を発表しています。
自らの商標を他人に商標登録出願されている皆様へ(ご注意)
「出願人の業務に係る商品・役務について使用するものでない場合」「他人の著名な商標の先取りとなるような出願や第三者の公益的なマークの出願である等の場合」は商標登録されないとしています。
また、日本弁理士会もこれを問題視した記事を発表しています。
商標登録出願にかかる炎上事例に関する考察
この事案では手数料の未納により商標登録は成立していませんが、仮に成立しても、商標広報の発表から2ヶ月以内なら、第三者でも登録異議の申し立てをする権利があり、また利害関係が発生している場合(PPAPの例で言うとエイベックス)ならば原則として時期を問わず商標登録無効審判を請求できます。
また、仮に成立しても商標権は指定商品または指定役務にのみ及ぶものであるため、先のPPAPの例でいえば曲名や歌詞などに用いることや、一般の人々が言及したりカバー動画をアップすることが制限されるわけではないという解釈が一般的であるようです。
みうらじゅん氏の「ゆるキャラ」のように、商標出願の乱用・悪用からそのフレーズを使用する自由を守るための商標登録というのも、場合によっては必要になるのかもしれません。