裁判の報道から3週間程度経ち、その間に重大なニュースも色々あったので世間的にはもう忘れ去られたことなのかもしれませんが、新たな記事がいくつかインターネットで公表されています。
「編み物動画」で著作権侵害!? 動画削除をめぐる「YouTube法廷闘争」の行方 (Asagei Biz)
2020/08/21の記事。うっかり拾い忘れ、載せるタイミングを失っていました。申し訳ございませんでした。
「ユーチューバー」同士の著作権訴訟の行方 グーグル側の問題は?
(デイリー新潮)
2020/08/27発売の週刊新潮の記事
また、弁護士の方が見解を示している次のような記事もあります。
著作権の基本のキ〜編み物YouTube訴訟〜
松田昌明弁護士(六甲法律事務所)のブログの投稿
YouTube動画は、どの程度他人の動画と似ているとアウトなのか? (日経XTREND)
福井健策弁護士とのQ&A形式の記事(今回のサムネイル。問題があれば差し替えます)
特に日経XTRENDの記事の、「何が何を侵害したかわからない」というのは弁護士の方も取材に当たった質問側の記者の方もかなり困惑しているように思いました。その点はおそらく原告も、そして視聴者である私たちも困惑しています。
弁護士という立場上、判決がこうなると断言することはしてはならないのだろうと思いますが、「(もし本当は著作権侵害ではなかったとしたら)被告の敗訴の可能性が上がるだろう」との見解を示しておられます。
編み物に限らない一般論として、次の点も重要であると思いました。
・偶然似た場合は著作権侵害にならない(厳密には複製権の侵害であるため、これ書くの何回目だろう)
・ありふれた、定型的な表現は著作物に当たらない
・アイデア、技法、手法は著作物に当たらない
そして、「異議申し立てが受理され、審査期間の間に申立人が削除継続のための証拠を提出しなければ自動的に動画が復活する」というのも重要です。ここまでのできごとを追っていくと、「異議申し立てが受理される」というところにそれなりにハードルはあるようで、そして本当に著作権侵害が起こっていたら申立人も黙っておかず証拠を提出するはずなので、そう簡単に動画が復活するわけではありません。とはいえ、関連リンクの福井弁護士の記事を見る限り、異議申し立てのシステムも自動化されていて、受理されて審査期間に何もなければ元に戻るようです。
有名な「うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい」という言葉のとおり、インターネット上で大規模なサービスを提供する運営側は、そのサービス内で飛び交う無数の情報の真偽や正当性にまで深く関与することはほぼ不可能です。サービスのシステムの弱点を責めるよりも、そのシステムを悪用するユーザーを野放しにしないことが重要であると考えられます。