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編み物ユーチューバー著作権裁判 双方の主張


当初からこの問題を知っている人は、原告による被害の情報を「知りすぎている」あまり、かえって争点の認識があいまいになっているかもしれません。報道および原告の支援企業による情報から改めて整理します。

原告と被告
原告 チャンネルY
被告 チャンネルSおよび共同運営者YM

双方の主張について、複数の報道機関の記事を元に整理しました。報道などの情報が不十分な点は適宜こちらで補足しています。

原告側の主張
・著作権侵害については一切身に覚えがない。
・「どの部分が著作権侵害に当たるか」を被告に問い合わせたが回答がなかった。
・仮に似ている部分があったとしても元の作品が著作物と言えるほど独創性が高いとは考えられない。(補足:著作権侵害とは厳密には複製権の侵害であるため、「偶然似てしまった」は著作権侵害になりません)
・著作権侵害の警告を複数受けてチャンネルが閉鎖されるリスクがあるため、90日間動画をアップすることができず、収益を得ることができなかった。
・これはYouTubeの著作権侵害通知による動画削除を乱用した行為である。

被告側の主張
・弁護士に相談した上で著作権侵害の通知をした。(補足;相談したらおそらく通知をやめるよう助言される可能性が高い。理由は後述)
・動画削除の判断をしたのはYouTubeである。(補足:動画削除は著作権侵害申し立ての通知に基づくものであり、YouTubeは著作権の所有について判断を下すことができません)
・異議申し立てによって容易に動画を復元できた。(とても重要な補足:本当に著作権侵害があったら、被告はコンテンツの削除状態を継続するために裁判所への請求を行ったという証拠を提出する必要があり、容易に動画の復元などできるはずがない。今回の原告ではないが、異議申し立てをしたL氏が「10〜14営業日の審査期間」と述べていたのは、この証拠を提出するまでの猶予のことである。弁護士に相談した場合、証拠がない時点で通知の送信はやめておくよう助言されるだろう)

素人でも論破できてしまった気がする
これでは色々と不十分というか、被告の余罪を追及したい人もいると思いますが、このたびは民事裁判なので「余罪を追及」という表現自体が不適当かもしれません。

また、YouTubeで異議申し立てによって住所・氏名が知られるリスクを指摘している人もいますが、著作権侵害申し立ての時点で被告の住所・氏名も通知されており(2020/08/25追記。動画丸パクリ被害でもまず、申し立てに二の足を踏む理由の一つ)、そもそも訴状が送達された時点で当然に原告の住所・氏名は被告に知られていることになります。正式な法的手段を取るには必要なリスクであると考えられます。

なお、裁判は公開が原則であるため、管轄の裁判所での裁判記録の閲覧(第三者の場合は手数料150円が必要)も可能ですが、事件番号を知らない場合に目的の裁判記録を閲覧するのは困難です。また、閲覧申請書も裁判記録に綴じ込まれるため、のちに記録を閲覧した人に、過去に閲覧した人の個人情報が知られるおそれがあります。先に述べたとおり事件番号を知らない場合はそもそも裁判記録の閲覧そのものが困難なので、より詳しく知りたい場合は第2回弁論期日の傍聴を予定したほうがいいでしょう。

Posted in 編み物著作権問題

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